桜の印鑑

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いまわたしは、まだ小学生とか中学生の時のことを、時たまものすご~く懐かしく思い出す時がけっこうあります。それはクラスのテストがあったとき(多分国語だったと思うけど…)出題された漢字が書けずに困っていたわたしは、横に3本の線を書くのかそれとも2本だったかすっかり忘れてしまい「えぇい、ここはゴマカしちゃおう !」などと、まるでちびまる子ちゃんのようにテキトーに考えて、真ん中の線をうっすらと消しゴムで消し、3本線を書いたのか(それでもウス~クは書かれているように見えるように)、それとも2本線になるように消したのか、どっちつかずに見えるように小細工をしたのです。わたしはもちろんどっちが正しいのかは分ってませんでした。

だからどっちととってもらっても良かったのです。われながら「ズルいことしちゃってるなあ」とは思ったのですが、その時は切羽詰まっていたので、結局良心の方がズルズルと引っ込み、小ズルい路線が心の中で勝ったのです。(これを頭脳プレーだと思ってたわたしが情けない !)

で結果はというと、その小ズルい路線が見事にズに当たり、私の回答欄のその項には大きな○が付いていたのです。そして点数は98点でした。

そこで問題、というか心にグサッと刺さるものが目に入りました。それは98と赤ペンで書かれた数字のその脇に「よくがんばりました!」の桜マークの印鑑が押してあったのです。あぁこれさえ無けりゃ、心晴れ晴れ 胸を張ってオウチに帰ることができたのに……。わたしの心はグサグサになりました。なぜかというと、

だってそのわたしのゴマカし回答の字の、うっすらと見えるか見えないかに書かれた線のところに、先生の赤ペンで点ポツ「、」が打たれ
(私の家では「、」をこう読んでました)その下に「?」のマークが書かれていたのです! それでいて○をくれた!!そうです先生はわたしの企みなどとっくにお見通しだったのですよ。でも先生はそんな生徒(わたしのことです)を見透かして「こんなバレバレの小細工までしても、点数が取りたいんだろうなぁ」と哀れに思って○を付けて点数を与えてくれたに違いないんです。

でも「この書き方に、先生は疑問は持っているんだぞッ」ということをさりげなくわたしに示すために「?」を付けたのです!そぉして桜マークの「よくできました!」印鑑を押してくれたのです。もちろん当時のわたしにこんな細かな分析まではできませんでした。(だってまる子だもん)心のグサグサグサッときたのは「なんか知らないけど、先生は感づいてるんだろう」ということだけでした。

その先生の細かな配慮を知ったのは、高校に入ってからの同級会の時でした(先生はクラス担任でもあったのです)。先生はわたしにこう言いました。「そういえばお前、漢字テストでゴマカして書くのが上手かったなぁ」と。わたしは「えっ!」とゴマカしましたが胸がドキドキしました。

知ってて知らない振りをしてくれたのに、なにも今言わなくたって…。と言う心境でした。でも何だかわたしの隠れた暗~い過去が暴かれたようでそれからちょっと落ち込んでしまいました。そしてクラス会がお開きになって、皆と別れるときに先生はわたしに近寄ってボソッとこう言ってくれたのです。

「でもなあ、俺はお前のその負けず嫌いなところを買ってたんだぞ! 見ろ、けっこういい学校に入れたじゃねぇか、なっ!」と。そして「まだまだお前は伸びると思ってるよ、頑張れ! でもな、あんなの大学の入試じゃ通用しねえぞ」とも。なぜか心に暖か~い灯がポッと点いたのを感じました。そうです結局わたしはあの先生のくれた桜マーク「よくがんばりました!」に癒され、おかげでヒネることもなく志望校に入れました

わたしが偏差値70近い大学に受かれたのも、この先生のおかげだとつくづく思っています。そして将来は「やっぱり先生になろうかなぁ」などと勝手におちゃらけています。でも彼の先生は、ちなみにまぁだ独身だそうです…。

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