お婿さんの印鑑

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結婚を決めた私が、彼に一番最初にプレゼントしたのは印鑑である。彼はお婿さんである。お婿さんになってくれるのは、嬉しかった。彼を、たくさんの名義変更がこれから待ち受けている。

ハンコが必要になる。なので、認印をプレゼントした。と言っても、100円の安価なものだ。
「何かと必要になるかもしれないから」といって渡した。彼は「ありがとう」とだけ言って受け取っていた。しかし、数日後、銀行の名前変更に行ってくるというので、ついていくことにした。え?来るの?という目をされた気もしたが、いいのだ。新婚だもん。

彼はまさかの銀行ではなく、はんこ屋に行った。驚きすぎて声が出なかった。彼は、注文していたのだ。しかも、おしゃれなハンコだった。書体もおしゃれに見える。古印体というそうだが、私はこんなおしゃれなはんこを持っていない。何か、婿に迎えるというだけで、自分よりおしゃれなハンコを持っているのがちょっとだけ悔しい。

だって、自分は何年もこの苗字と付き合ってきたのにこんな素敵な印影残せてきてない。「印鑑作っていたの隠してたでしょ」と印鑑に対するジェラシーをゆがんだ形で彼にぶつける。

きれいなグリーンのハンコを手に彼は、銀行へと向かった。でも、なんだかうれしい。私の苗字を自分のものにしている彼が誇らしかった。そして、私も作ろう。彼に負けないハンコを。苗字が喜ぶような印影をぺたぺたと世の中にたくさん押して暮らしてやる!そんな気持ちだった。

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